2009年11月30日月曜日

When It Rains

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----- MIZUKI Yuu Sound Sketch #11 -----

  「When It Rains」 水城雄


 こちらでは長雨が続いておりますが、そちらはいかがおすごしですか?
 満州はもう寒いのではないかとお父さまがおっしゃっておられましたが、お身体にさわりはありませんか?
 雨のせいで、戦地からのあなたのお便りは、インクの字がにじんで読みづろうございました。でも、読めることには読めました。ハルピンよりも遠くに行かれてしまったとのこと、とても心配です。でも、これもお国のためですもの、いたしかたのないことです。
 昭三は少し風邪をひいてしまいました。心配にはあたりません。鼻を出していますが、熱はもうすっかり下がりました。しばらく寝かせてありましたが、下の民子が心配顔で何度ものぞきこんで「にーちゃんダイジョブ?」と問いかけるのはおもしろくもあり、かわいらしくもありでした。
 お腹の子は順調のようで、ときどきびっくりするほど強く蹴られます。きっと元気な男の子でしょう。あなたはもうひとり、男の子をほしがっておられましたしね。
 先日のわたくしの誕生日には、たいそうなものをお送りいただき、ありがとうございます。大切に使わせていただきます。ほんとうにうれしうございました。おかあさまからもきれいな飾り櫛をいただいてびっくりしました。みなさまからお気づかいいただいて、とても幸せです。
 わたくしも二十歳になりました。まだまだ知らないことばかりですが、あなたのお留守のあいだ、おとうさま、おかあさまといっしょにしっかりとお家と子どもたちをお守りしておりますので、あなたもどうぞお国のためにおおきにお働きくださいますよう。
 でも、お身体にはくれぐれも気をつけて。
 鉄砲が飛んできたら、どうぞお隠れになってくださいましね。

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