2009年11月27日金曜日

The Green Hours

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----- Jazz Story #29 -----

  「The Green Hours」 水城雄


 拝啓。
 ひと雨ごとに秋深まる今日このごろですが、きみはどうしていますか。
 ぼくはなんとか元気でやっています。
 この季節になると、むかし痛めた膝がシクシクと痛むことがあるのだけれど、今年は割合調子がよくて、たすかってます。きっと、定期検診で血糖値を注意され、去年からスイミングを始めたことがよかったのかもしれません。
 毎朝、がんばって早起きして、早朝のプールにかよっているのです。だいたい朝の八時三十分くらいがすいているようです。休みながらゆっくりと、何度もプールを行ったりきたりしています。
 昔のぐうたらなぼくしか知らないきみには、きっと想像もできないことでしょう。
 がらんとひと気のないプールで泳いでいると、きみのことを思いだします。きみは海が好きでしたね。休みになると、いつもぼくを海に誘いましたね。
 ぼくも海は大好きだったから、誘われのはとてもうれしかった。
 取り立ての二輪免許に、買ったばかりの中古のバイク。それにまたがって、ふたりで海に出かけました。
 ぼくの身体に両手をまわし、しっかりとしがみついてくるきみのやわらかな胸の感触を、ぼくはいまもはっきりと思いだすことができます。

 海に着くと、ぼくは竿を組みたて、しかけをつける。
 針の先には、途中で買ってきた餌のゴカイ。キス釣りのしかけで、実際には釣れたことなんかないけれど、砂浜から海に向かってしかけを遠くまで投げいれる。
 その横で、きみは背中にしょってきた折り畳み式の椅子を組み立て、砂浜に広げる。
 しかけを投げこむと、ぼくはきみと砂浜に並んで座った。
 海からの潮風が気持ちよかった。
 ときには折り畳み椅子ではなく、シートを敷いて寝転がることもあった。
 きみはいつも手をのばしてきて、ぼくと手をつなぎたがった。ぼくはきみの手を握りかえし、そのまま眠ってしまうこともあった。
 秋の朝、膝が痛まないことに感謝しながら、ぼくはプールでそんなことを思いだしています。
 きみもときには、ぼくのことを思いだすことがありますか? きみがぼくを思いだすとしたら、どんなときなのでしょうか。
 きみはもう結婚しましたか? 子どもはいますか?
 きみはいま、どこでどうしているのでしょうか。

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