2009年10月18日日曜日

The Night Has a Thousand Eyes

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----- MIZUKI Yuu Sound Sketch #34 -----

  「The Night Has a Thousand Eyes」 水城雄


「夜は千の目を持つ」
 降るような星。
 あのときぼくが見ていたもの。

 死ぬのがこわい、ときみはいう。
 せっかく生まれてきたのに、またこの世に存在しなくなってしまうの。死ぬってどんな気分? 死ぬのは苦しい? 死んだらどこへ行くの? 死にたくないよ。死んだらわたしも、あなたの記憶も消えてしまう、と。
 生まれる前のことを覚えている? とぼくは聞く。
 覚えていないわ。
 同じだよ。死ぬというのは、生まれる前のところに戻っていくだけ。なにもない。静かで、おだやかなところに帰るだけ。
 でもこわい。なにもなくなるのがこわいよ。あなたのこともなくしたくない。そういってきみは泣く。

 あのときぼくが見ていたものの話をしよう。
 ぼくは小学校二年生だったと思う。
 親に怒られたぼくは、かけっぱなしの梯子を伝って、家の大屋根に登った。雪国で、冬になると屋根雪を降ろさなきゃならない。そのための梯子が、春になってもかけっぱなしになっていた。
 屋根に寝っ転がって星を見ていると、自分がどこにいるのかわからなくなる。そんな経験はないかい? 自分が丸い地球に張り付いて、寝ているのか、地球にぶらさがっているのか、わからなくなってしまう。
 ちっぽけな地球の表面に張り付いているぼく。宇宙のまんなかにぽっかりと浮かんでいる地球に張り付いているぼく。
 地球、太陽系、銀河、銀河団、泡構造、超新星、膨張する宇宙、ブラックホール、ビッグバン、百数十億年のかなた。それが目の前に広がっている。永遠のかなた。
 永遠ってなんだろう。宇宙のはてにはなにがある?
 そんなことを考えていると、なにが原因で父にしかられたのかすっかり忘れてしまう。
 でも、屋根から降りると、まだ怒っている父がいたし、父に気を使っている母もいたし、自分は怒られまいとこっちをうかがっている妹がいた。
 そうやって地表の現実のなかで、今日まで生きてきた。
 宇宙のなかのちっぽけな現実。喜んだり、悲しんだり、疲れたり、発奮したり、裏切られたり、愛したり、お金の心配をしたり。
 この命も、いずれ消えていくよ。
 死なない人はただのひとりもいない。偉大な人もちっぽけな人も、金持ちも貧乏人も、ひとしく皆、死を迎えるよ。
 無に戻るんだよ。

 そうだ。星を見に行こう。
 小学生のぼくのように、無垢に星を見つめて、きみといっしょに永遠について考えよう。残り時間を使って。
「夜は千の目を持つ」
 に続く言葉は、
「昼はただひとつ」
 だって知ってた?
 ぼくの昼の目。それはきみ。それがぼくの永遠。

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