2009年10月21日水曜日

Cat's Christmas

----- Jazz Story #19 -----

  「Cat's Christmas」 水城雄


 ご主人さまがあたしのためにリボンの耳飾りを作ってくれている。どうやらそれが今年のクリスマスプレゼントらしい。
 赤と金色のリボンを器用に編んで、糸を通して形を整える。
 きれい。そしてかわいい。
 好き、ご主人さま。
 でも、あたしのプレゼントはあっという間に完成してしまった。
「これはまだあげないのよ、リリ。明日まで待ってね」
 ご主人さまはあたしの新しい首輪を小箱にしまってしまう。そして、横に置いてあった編みかけのマフラーをそっと取りあげる。
 いとおしそうになでてから、編み棒を動かして続きを編みはじめる。
 ご主人さまのいとしい彼へのプレゼント。でも、そのプレゼントはきっと渡されずじまいになることをあたしは知ってるんだ。だって彼には大切な奥さんとお子さんがいらして、手編みのマフラーなんかもらったら困ってしまわれるってことは、ご主人さまもよくわかっているからね。
 あたしはちょっと悲しくなって、ドアのところに行く。
「にゃあ」
 ご主人さまがすぐにやってきて、あたしのためにドアをあけてくれた。
 ふー、寒い。でも、いい天気。ちょっとお出かけしましょう。
 お隣の一家は猫嫌いで、垣根の下にはペットボトルがズラリ。そんなことしても全然猫よけにはならないのにね。ペットボトルなんか猫は苦手でもなんでもないもん。でもあたしもそういう一家が嫌いだから、ペットボトルには関係なくそんなうちに入っていったりしないもん。
 もう少し行くと、角の住田のお兄さんがあたしをめざとく見つけた。
「やあ、リリ。お散歩かい?」
「にゃあ」
 しっぽを立てて膝の下にお尻をこすりつける。マーキング、マーキング。
「きみのご主人さまはなにしてる? ぼくと遊んだりしたくないかな」
 そんなわけない。住田のお兄さんがご主人さまに気があるのは知っているけれど、ご主人さまのほうは相手にしていない。世の中、うまくいかないものよね。
「わかってるって。きみのご主人さまは人の道にはずれた恋に夢中なんだろう? ぼくなんかメじゃないってね。だからぼくも、きみのご主人さまにはプレゼントはあげない。そのかわり、きみにあげる。きみはいつもかわいくていいコだからね」
 そういって住田のお兄さんはあたしの首になにかをパッとはめた。
 チリン。鈴の音。
「よく似合ってる。あたらしい首輪だよ」
 どんな首輪なのか、あたしには見えないよ。でも、チリンチリンという鈴の音がいい感じ。
「リリという名前によく似合ってるだろ? 帰ってご主人に見せてあげなよ。そして、かなわぬ恋はいいかげんあきらめて、きみのほんとのサンタを見つけなさいっていってあげな」
 ご主人さまのほんとのサンタってだれだろう。まさか住田のお兄さんじゃないよね。そんなことをかんがえながら、家にもどった。
「あら、どうしたの、その首輪」
 ご主人さまがびっくりしてあたしを見る。
「鈴がついてるのね。かわいいじゃない。だれかにつけてもらったの? ちょっと早いクリスマスプレゼントかしら。だれかリリのこと、思ってくれている人でもいるの?」
 あたしはご主人さまの顔を見あげた。そうじゃないって。
 そして、いろんな思いをこめてこたえる。
「にゃあ」

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