2009年10月2日金曜日

Fourteen

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----- MIZUKI Yuu Sound Sketch #31 -----

  「Fourteen」 水城雄

 十四歳のきみへ、
 十四歳のぼくから送信する。

 ぼくはあの日、ママに嘘をついた。
 女の子に会うために、夜、外に出た。
 そのころは携帯電話なんてなかったんだ。
 もちろんメールだってなかった。
 合図は間違い電話だった。
 電話がかかってきて、ママが取る。
「いえ、ちがいます」といって、切る。
「だれから?」とぼくが聞く。
「間違い電話よ」とママがいう。
「だれと間違えたの?」
「本田さんだって」
 それが合図だった。

「参考書を見に行くよ」と嘘をついて、ぼくは外に出る。
 いつもの公園のブランコのところで、あの子に会う。
 あのころはコンビニだってなかった。
 あの子となにかするわけじゃない。
 ただの話、学校の話。
 つぎの日にはまた会えるのに、こうやって夜、ふたりきりで会うことが特別だった。
 そんなことがうれしくて、ドキドキしてた。
 でも、あの子と別れて、帰り道、ぼくはママの顔を思いだした。

 もちろん嘘はそれが初めてじゃなかった。
 それまでにつまらない嘘をいっぱいついてた。
 でも、今日の嘘は特別だった。
 特別なような気がした。
 子どもが大人につくつまらない嘘とは違ったような気がした。
 大人の嘘。
 自分が一番嫌っていた嘘つき大人の仲間入りをしてしまったような気がした。
 泣きたくなった。
 でも、泣かなかった。
 ぼくはもう大人になってしまったのだった。
 嘘つきで、汚くて、ずるい大人。
 自分の欲望を通すためにはあれこれと立ち回る大人。

 ひとはみんな大人になる。
 ネバーランドの住人だって大人になる。
 ただ、ネバーランドの住人は大人になったらみんな首をはねられてしまうのだ。
 ぼくは首をはねられなかったし、きみもはねられずに生きたまま大人になるだろう。
 でもぼくは、
 きみが、
 きれいで、
 すきとおっていて、
 きらきらとかがやいている大人になってほしいと思う。
 そういう人っているんだ。
 ほんとにいるんだよ。

 送信、おわり。

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