2010年2月3日水曜日

Lonely Girl

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----- MIZUKI Yuu Sound Sketch #7 -----

  「Lonely Girl」 水城雄


 路線バスがやってきて、停留所に停まる。
 が、その少女は動かなかった。乗らない、という意志を、首をうなだれ、目線を歩道のへりに落として、消極的に運転手に伝えている。
 やがてバスはエアコンプレッサーの音を残して走り去った。
 疲れた街灯が弱々しくまたたき、蛾の踊りを明滅させている。
 私はそれを、反対車線の自販機の前にとめた車のなかから見ていた。
 仕事を終え、ひとりの部屋に帰る途中、まだ自販機のタイマーが切れていない時間であることを確認して、買いに寄った。バス停の前に、ひとりの少女が立っていた。
 中三? あるいは高校生。私の娘と同年代に見えた。Tシャツに短いスカート。素足に黄色いサンダル。夜中、そしてこの季節、ひとりで外出するにしては、軽装すぎるように思えた。
 バスをやりすごしたのは、路線が違うせいか。それとも……
 気になった私はアイドリングを停め、しばらく待った。
 女性がひとり、少女に近づいてきて、声をかけた。少女は振り返ろうともしない。無視して、かたくなに突っ立っている。
 女性が少女の肩に手をかけた。少女が身体をひねって、手を拒否する。
 女性は立ち去ってしまった。また少女がひとり、バス停に残された。
 うなだれた少女が、手をあげ、指を目の下にあてる。
 立ち去ったと見えた女性は、離れた街灯の下のベンチに腰をかけていた。
 少女がまた目をぬぐった。そしてちらりとベンチのほうを見る。
 私は車のエンジンをかけた。
 わが娘のことを思いながら、ゆっくりとアクセルを踏みこんだ。
 少女が顔をあげ、ベンチのほうに歩きはじめるのが見えた。

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