2010年4月28日水曜日

死に向かう詩情

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----- MIZUKI Yuu Sound Sketch #68 -----

  「死に向かう詩情」 水城雄


 そんなおおげさな、というけれど
 それをみんなはかんがえないわけじゃない
 そうばん完治するとわかってはいても
 そうとう長引けばふと気持ちに魔がさす
 風邪ひいたくらいでおおげさな、というけれど
 ふとかんがえるでしょ、あ・ん・た

 人身事故で遅れた電車
 待ち合わせの時間に間に合いそうもない
 いらつく身体をふとよぎる
 重い鉄のかたまりの感触
 ひ・と・た・ま・り・も・な・い・わ・な
 どん、ぐしゃ、ぶしゅ

 念のために、と抜かれた血
 午後には検査結果が出てますから
 月曜午後の医院の受付
 事務員のひそひそ話
 爬虫類じみた容貌の医者が眉をひそめる
 壁にはなぜかカラヤンの指揮姿の写真、で・か・い

 視界の端にふときざした影に
 気になって視線を向ければ
 白髪頭で頬肉のたるんだおっさんのしぼんだ姿
 これ、おれ?
 これ、おれ?
 おれ、これ?

 中学校のあたらしい温水プールは
 市民に開放されています
 一時間二百円
 卒業生たちがアルバイトで監視してます
 監視されてるのは腹のたるんだ老人たちと、おれ?
 AEDのテストは万全

 いいなあ歳とるって
 死ぬと思うから「詩情も湧く」のであります

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