2010年4月25日日曜日

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----- MIZUKI Yuu Sound Sketch #59 -----

  「亀」 水城雄


 もし。
 もし。
 もしもし。
 もうし、もうし。
 もしもし、亀よ。
 亀さんよ。
 まあ聞いてくれよ。
 俺ほど不幸な男はいねえって話よ。
 こう見えてもよ、俺も昔はけっこういい男だったんだぜ。
 いや、昔でもねえか。ほんのこないだまでだ。
 髪だってほんのこないだまでふさふさしてたし、黒々してたし、腰だってまっすぐぴんしゃんしてたし、女にだってもてたし、ちんぽも石みてえにかちんこちんだったさ。
 それがどうよ。ひでえ女につかまっちまって、あっという間にこのざまよ。
 まあ、多少はいい思いをさせてはもらったけどな。
 いわゆる、シュチニクリンってやつよ。
 毎日、飲めや歌えの、きれいなねえちゃんたちとはやりまくりいの、極楽みてえな日々だったな。ああ、そのときはたしかにそう思ってたさ。
 人間、目の前の快楽には弱いのよ。
 しかし、そんなことは長続きするもんじゃねえし、終わっちまえば快楽なんてのはむなしさが残るだけよ。わかるだろう、おめえ。
 わかるだろう、亀さんよ。
 しかも、箱をあけたらあっというまにこのざまよ。パンドーラ。
 なんのために生まれてきたんだろうなあ、人間って。
 どうして俺はこんなところにいるんだろう。
 なあ、亀さんよ。
 Why did I come here? てなもんよ。なあ、亀よ。
 Why did I come here?
 ホワイ・ディッド・アイ・カム・ヒア?
 ホワイ・ディッド・アイ・カム・ヒア?
 ホワイ・ディッド・アイ・カメ・ヒア?
 ホワイ・ディッド・アイ・カメ・ヒア?
 カメ・ヒア?
 カメ……?
 もしもし。
 もしもし。
 もしもーし!

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