2010年4月26日月曜日

また君は恋に堕落している

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----- MIZUKI Yuu Sound Sketch #60 -----

  「また君は恋に堕落している」 水城雄


 砂丘の風紋の先端に君は立っている。
 さかしまに。
 東の空はとっくに白みはじめていて、
 やがて夜が明けることを君はあせっている。
 西から吹くかすかな風。
 その風に含まれるわずかな湿り気。
 君の、毒を含んだ尖ったしっぽのふくらみが湿り気をとらえ、
 甘美な水滴の輝きを夜明けの光線の中に放つことを、
 君は夢想している。
 その水滴を口に運ぶことを夢想している。
 たった一滴の水で生きながらえることを夢想している。
 君は生きながらえ、彼女との恋を成就しなければならない。
 この砂丘に子を残すこと。
 それが君の使命なのだから。
 残された子はまた、君とおなじ使命を背負うのだろう。
 君は確かに選ばない。
 砂丘の風紋の先端にみっともなくさかしまに立たないことを。
 彼女との恋を成就しないことを。
 死を。
 君は確かに選ばない。

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