2010年6月5日土曜日

身体のなかを蝶が飛ぶ

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----- MIZUKI Yuu Sound Sketch #70 -----

  「身体のなかを蝶が飛ぶ」


 あるいていたら
 蝶がぱちんとひたいにあたった
 どこに行ったのかとふりかえってみたが
 どこにもいない
 おかしいなとおもったら
 ひたいからそのまま私の身体のなかにはいっていた

 あたまのなかにちょうちょがいる
 ひらひら飛びまわっている
 せまいだろうに
 たのしそうに飛びまわっている
 おおきな蝶じゃない
 でも
 どんな色の蝶なのか
 どんな模様の蝶なのか
 私には見るすべがない
 なにしろ
 私のなかにいるのだから

 ちょうちょはあたまから身体のなかへと飛んできた
 口をあけたままにしていたら
 そこから外に出ていってくれたのかな
 とおもったけれど
 もうおそい

 ひらひら
 ひらひら
 蝶が私のなかを飛ぶ
 まるで自分のもののように私の身体のなかを飛ぶ
 まるでだれのものでもない自由な空を飛ぶように
 ひらひら
 ひらひら
 飛んでいる
 ひょっとして
 と私はおもう
 私は私の身体が私のものだとおもっていたけれど
 本当は私の身体は私のものではなくて蝶のものなのかもしれない
 私の身体は私のものではないのかもしれない
 私の身体は自由な空とおなじように
 だれのものでもないのかもしれない
 私はかってに自分の身体の内側と外側を区切って
 内側を自分のものだと思っていたけれど

 私のなかに蝶がいる
 楽しそうに飛んでいる
 そんなに楽しいのかい、きみ?
 じゃあ好きなだけいていいよ
 ずっとそこで遊んでいていいよ
 私も私の身体の内側が自分のものだなんて思うのは
 よすことにしよう

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