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----- Jazz Story #7 -----
「The Pursuit of the Woman with the Featherd Hat」 水城雄
夫にも先立たれ子どももいない伯母の葬儀は父が喪主となってぼくの家でとりおこなわれることにな朝の8時に病院から電話がかかってきて臨終をつげられ前の日から風邪ぎみで咳に苦しんでい伯母の住んでいた村の寺からお坊さんがやってきて顔に白い布をかぶせられた伯母のかたわらでお経をあげ葬儀屋がふたりがかりで伯母の身体をきよめ小さなお棺におさめ父の姉妹である下の伯母たちとその夫娘息子たちもやってきうちの離れの座敷に棺桶を囲んでぐるりと座りぽつりぽつりと伯母の思い出を語ってい伯母からみれば姪にあたるぼくの従姉妹葉子も黒い洋服を着て座ってい彼女はたしかクリスチャンのはずだれもそのことを知らなぼくしか知らな葉子はどんな気持ちで浄土真宗の僧侶が読みあげるお経を聞いているのだろ葉子の横には亡くなった伯母の妹の山田のおばさんが座ってい山田のおばさんの頭には灰色の毛の帽子がのってい脳腫瘍が悪化してなにもわからなくなったおばさんの世話をしているおじさんが買ってあげたものだろおばさんが帽子を揺らしながら大きな声でこれはどなたのお葬式ですかといった。
お花をお取りくださいと火葬場の係員がいいみんなは手に手に花をとる最後のおわかれをしてくださいと係員がいいみんなは手の花を棺桶のなかに入れる目を閉じた伯母の顔のまわりに花がいっぱいになる棺桶の蓋が閉じられ係員が焼却炉の扉を開く音もなくすべるように焼却炉にはいっていくお棺にむかってみんなは手をあわせお別れの言葉を口にするだれかがすすり泣いているいっしょによく遊んだよねとだれかがつぶやくぼくは少女時代の伯母の姿を想像してみようとしたがうまくできないだけど葉子の少女時代の姿なら知っている従姉妹の葉子も手を合わせて伯母にお別れをしているその手には数珠があるクリスチャンなのに数珠を持っているんだとぼくは思うけれど彼女がクリスチャンであることはだれも知らないのだからそれも当然なのかもしれないこれはどなたのお葬式ですかと山田のおばさんがいい葉子が川村の姉さんですよとこたえる山田のおばさんの顔に驚きが浮かぶけれどすぐに消えるそうですか川村の姉が死にましたかところであなたはどちらさまですかわたしは葉子ですよああ葉子ちゃんだよねひさしぶりとおばさんがいっているあいだに、焼却炉の大きな扉がずしんと音を立てて閉じられた。
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