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----- 群読のためのシナリオ -----
群読シナリオ「Kenji」(1)
原作:宮沢賢治/構成:水城雄
出演 歌手
ピアノ
朗読A~D
全員、音楽教室へ入場。
ピアノ、中央。
向かって左からA、D、ピアノをはさみB、C、歌手。
歌手のみマイクスタンド使用。
ピアノ音、先行(ジングル風一発音)。
歌手「(生徒たちに呼びかけるように)ケンジ」
ピアノ音、もう一度。
全員(歌手も)「雨ニモマケズ、風ニモマケズ。雨ニモマケズ、風ニモマケズ。雨ニモマ
ケズ、風ニモマケズ……(何度もくりかえす)」
ひとり抜け、次のセリフに移行していく。
またひとり抜け、ひとり抜け、というふうに、気がついたら全員、次のセリフに以降
している。
全員「どっどどどどうど、どどうどどどう。どっどどどどうど、どどうどどどう。どっど
どどどうど、どどうどどどう……(何度もくりかえす)」
全員がそろったところで次第に声が小さくなっていく。
そしてささやき声になり、
全員「どっどどどどうど、どどうどどどう。青いくるみも吹きとばせ。すっぱいかりんも
吹きとばせ。どっどどどどうど、どどうどどどう」
その間にA、中央へ(ピアノ前)。
A「先ごろ、三郎から聞いたばかりのあの歌を一郎は夢の中でまたきいたのです。
びっくりしてはね起きて見ると、外ではほんとうにひどく風が吹いて、林はまるでほえ
るよう、あけがた近くの青ぐろいうすあかりが、障子や棚(たな)の上のちょうちん箱
や、家じゅういっぱいでした。一郎はすばやく帯をして、そして下駄(げた)をはいて
土間をおり、馬屋の前を通ってくぐりをあけましたら、風がつめたい雨の粒といっしょ
にどっとはいって来ました」
C「馬屋のうしろのほうで何か戸がばたっと倒れ、馬はぶるっと鼻を鳴らしました」
A「一郎は風が胸の底までしみ込んだように思って、はあと息を強く吐きました。そし
て外へかけだしました。
外はもうよほど明るく、土はぬれておりました。家の前の栗(くり)の木の列は変に青
く白く見えて、それがまるで風と雨とで今洗濯(せんたく)をするとでもいうように激
しくもまれていました」
C「青い葉も幾枚も吹き飛ばされ、ちぎられた青い栗のいがは黒い地面にたくさん落ち
ていました。空では雲がけわしい灰色に光り、どんどんどんどん北のほうへ吹きとばさ
れていました」
A「遠くのほうの林はまるで海が荒れているように、ごとんごとんと鳴ったりざっと聞
こえたりするのでした。一郎は顔いっぱいに冷たい雨の粒を投げつけられ、風に着物を
もって行かれそうになりながら、だまってその音をききすまし、じっと空を見上げまし
た」
ピアノ入る。
A、元の位置へ。
歌手、ピアノ横へ。
星めぐりの歌(Aパターン)。
あかいめだまの さそり
ひろげた鷲の つばさ
あをいめだまの 小いぬ、
ひかりのへびの とぐろ。
オリオンは高く うたひ
つゆとしもとを おとす、
アンドロメダの くもは
さかなのくちの かたち。
大ぐまのあしを きたに
五つのばした ところ。
小熊のひたいの うへは
そらのめぐりの めあて。
B、C、中央へ。
歌と演奏が続く中で、セリフ入る。
B「この地図はどこで買ったの。黒曜石でできてるねえ」
C「銀河ステーションで、もらったんだ。君もらわなかったの」
B「ああ、ぼく銀河ステーションを通ったろうか。いまぼくたちの居るとこ、ここだ
ろう」
C「そうだ。おや、あの河原は月夜だろうか」
D「そっちを見ますと、青白く光る銀河の岸に、銀いろの空のすすきが、もうまるで
いちめん、風にさらさらさらさら、ゆられてうごいて、波を立てているのでした」
B「月夜でないよ。銀河だから光るんだよ」
D「ジョバンニは云いながら、まるではね上りたいくらい愉快になって、足をこつこつ
鳴らし、窓から顔を出して、高く高く星めぐりの口笛を吹きながら一生けん命延びあが
って、その天の川の水を、見きわめようとしましたが、はじめはどうしてもそれが、は
っきりしませんでした。けれどもだんだん気をつけて見ると、そのきれいな水は、ガラ
スよりも水素よりもすきとおって、ときどき眼の加減か、ちらちら紫いろのこまかな波
をたてたり、虹のようにぎらっと光ったりしながら、声もなくどんどん流れて行き、野
原にはあっちにもこっちにも、燐光の三角標が、うつくしく立っていたのです。遠いも
のは小さく、近いものは大きく、遠いものは橙や黄いろではっきりし、近いものは青白
く少しかすんで、或いは三角形、或いは四辺形、あるいは電や鎖の形、さまざまになら
んで、野原いっぱい光っているのでした。ジョバンニは、まるでどきどきして、頭をや
けに振りました。するとほんとうに、そのきれいな野原中の青や橙や、いろいろかがや
く三角標も、てんでに息をつくように、ちらちらゆれたり顫えたりしました」
B「ぼくはもう、すっかり天の野原に来た。それにこの汽車石炭をたいていないねえ」
C「アルコールか電気だろう」
D「ごとごとごとごと、その小さなきれいな汽車は、そらのすすきの風にひるがえる中
を、天の川の水や、三角点の青じろい微光の中を、どこまでもどこまでもと、走って行
くのでした。
C「ああ、りんどうの花が咲いている。もうすっかり秋だねえ」
D「線路のへりになったみじかい芝草の中に、月長石ででも刻まれたような、すばらし
い紫のりんどうの花が咲いていました」
B「ぼく、飛び下りて、あいつをとって、また飛び乗ってみせようか」
C「もうだめだ。あんなにうしろへ行ってしまったから」
A「カムパネルラが、そう云ってしまうかしまわないうち、次のりんどうの花が、いっ
ぱいに光って過ぎて行きました。と思ったら、もう次から次から、たくさんのきいろな
底をもったりんどうの花のコップが、湧くように、雨のように、眼の前を通り、三角標
の列は、けむるように燃えるように、いよいよ光って立ったのです」
音楽は途中でFO。
別の音楽に変わる(器楽のみ)。
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