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----- MIZUKI Yuu Sound Sketch #19 -----
「Straighten Up」 水城雄
ちゅーちゃん、ちゅーちゃん。
そ、か。ちゅーちゃんはいない。いないんだ。あたしの大事な大事な猫のちゅーちゃん。仕事に集中するために、ママに預けちゃった。ごめんね、ちゅーちゃん。
仕事。仕事。あたしの仕事。
あたしの仕事は、女優。変な響き。じょ・ゆ・う。変な仕事。人前でお芝居して、お金をもらう。ううん、お金をもらえればラッキー。お芝居がお金になることなんかめったにない。だから、あたし自身とちゅーちゃんのご飯代は、アルバイトで稼いでいる。あたしとちゅーちゃんの住むおうち代も。
事務員のアルバイト。事務員の服を着て、事務のお仕事。
でも、あたしのほんとの仕事は女優。知らない人の前でお芝居することがあたしの仕事。というより、それがあたしの生き方。演じてないあたしは、ぬいぐるみと同じ。かわいいけれど、命は入っていない。
演出のセンセがあたしに新しいホンをくれた。命が吹きこまれたあたし。あたしは立ちあがる。ひとりで。かわいそうなちゅーちゃんはあたしに捨てられる。
ううん、捨てたんじゃない。お願いだからあたしにたくさん生きさせて。だから、少しだけママのところにいて。あたしが迎えに行くまでがまんして待っていて。かしこいちゅーちゃんなら、あたしのいまの気持ち、わかるでしょ?
あたし、気づいたの。ちゅーちゃんがいると甘えて、気になって、仕事に集中できないんだって。あたしの仕事はキーを叩いてメールを書いたり、数字を伝票から伝票に書き移したり、品物を包んでつり銭とレシートを渡すようなことじゃない。あたしの仕事はあたしという身体とこころが必要とされる。いまはちゅーちゃんもオトコも忘れて、あたしはあたしの仕事にまっしぐらに入っていく。
あたしはあたしの中に立ちあがる。まっすぐに。
この仕事のためなら、あたし、死んだっていい。神様、あたしの命を全部差し上げます。だから、あたしにいい仕事をさせてください。おいしいものも、楽しいことも、気持ちいいことも、きれいな服も、イケメンのオトコも、なにもいりませんから、あたしの全部で演じさせてください。
ごめんね、ちゅーちゃん。
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