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----- MIZUKI Yuu Sound Sketch #18 -----
「One Sweet Way」 水城雄
隣のレジのアルバイト女性がこちらを見て、それから男性アルバイトのわき腹をすばやくつついた。
あ、気づかれたかな、と彼女は思った。
彼女の前には男性客がひとり。弁当とスポーツドリンクを買おうとしている。彼女のレジかごのなかには、サンドイッチと紅茶のペットボトルがひとつずつ。
昼休み。彼女はいつもこのコンビニに来て、昼食を買う。その外国人のアルバイト学生がここで働くようになったのは、いつごろからだっけ。つたない日本語、つぶらな瞳。仕事場ではついぞ見ることのない無垢な笑顔。
右から左へ書類仕事をこなし、同僚とあたりさわりのない話をする。ときには飲み会と称して、セクハラぎりぎりの上司のジョークに付きあわされる。
部屋に帰ってもひとり。コンビニ弁当とテレビドラマ、ケータイメールで時間をつぶす。
彼とは四か月前に別れた。
会社の近くのコンビニにその外国人アルバイトが働くようになったのは、そのあとのことだ。
男性客の支払いが終わって、彼女の番になった。
かごをカウンターに置く。
「いらっしゃいませ」
つたない日本語。
また横からつつかれた。彼の顔がまっ赤になる。彼も彼女のことを意識しているらしい。それとも、ただからかわれて恥ずかしがっているだけ?
彼の分厚い手が品物を袋に入れ、代金を受け取り、釣りを彼女に渡す。
「ありがと」
彼女がいうと、彼の顔がさらに赤くなった。
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